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Channel: ギリシャ –世界一周人
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教会対教会ロケット花火戦争ロケット花火祭りに参加してみたら

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教会対教会ロケット花火戦争「ロケット花火祭り」(Rocket War)/ギリシャ・ヒオス島

イースターは春の訪れと命の誕生を祝う祝祭のはず。ひよこやウサギがメインキャラのはず。クロスバンを焼いて、ゆで卵を隠してお祝いするはず。

でも、エーゲ海に浮かぶギリシャの美しい島「ヒオス島」では、ロケット花火を使って過激な方法でイースターを祝います。

なぜなのか? 疑問に思うのは当たり前。でも、理由なんてロケット花火と一緒にどこかに飛んでいってしまうくらい、激しく興奮する祭りなのです。

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ロケット花火祭りの特徴

一晩でなんと6万発以上の花火が飛びかうというのがこのロケット花火祭りのすごさです。本来は二つの教会の間で打ち合うのですが、近年は村をあげての祭りとなりつつあり、街中でもロケット花火が飛び交います。

祭りの勝敗は、相手の教会の鐘に何発のロケット花火をあてられるか、それを鐘が鳴った回数で判断するということですが、正しく数えられる状況とはとても思えません。

また、ロケット花火といっても、日本で地面に差して火をつけるとピュ~っと飛んでいくあの程度の30センチほどの花火ではありません。シュバーーとかボボーーーとか、下手をするとドカーンといった爆音を立てるような火薬量のかなり多いロケット花火なのです。その全長は80センチを超えるものもあるほど。

花火業者が作って販売しているものだけでなく、違法ながら手作りのロケット花火を持ち込む人もいるらしく、毎年ケガ人続出の危険な祭りなのです。

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ロケット花火祭りの開催会場・開催日

ヒオス島はギリシャ領ですが、トルコにもほど近い小さな島。南北に50km東西に20kmほどで人口は5万人程度。その全島と近隣諸国からわんさかと人が押し掛けてきたのかと思われるほどの大騒ぎになります。

実際に開催会場となるのは島内にある小さなヴロンダトス村の二つの教会です。島を二分するかのように二つの陣営に別れて戦う教会の名は「聖マルコ教会」と「パナギア・エリツィアーニ教会」で、どちらもギリシャ正教の由緒正しい教会です。

開催日はイースター前夜。これは毎年異なった日になりますが、例年3月後半から4月前半頃になります。

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ロケット花火祭りの歴史

はっきりとした起源は分かっていませんが、少なくとも120年前から花火による祭りが行われているそうです。

ただ、有力な説として語られているのは、二つの教会とそれぞれの信者たちが、イースターの祝いをより派手にお祝いできるか競い合ったことがきっかけだったというものです。

その昔には、空砲を鳴らすなどの大きな音で互いを牽制していたものの、次第に激化して実弾や大砲を持ち出すようにもなっていたとか。それではまさに戦争そのものですね。

これではマズイと考えた島民たちが、花火を使うことを提案し、それが定着したという説です。本当かどうかは分かりませんが、こんな説くらいしか思いつかないという気もします。

また、ひそかに信じられている別説も。この地を征服したトルコ勢がギリシャ軍の大砲を没収してしまったため、ヒオスの島民たちは、花火や火薬弾で対抗したというもの。大砲の代わりに花火は無理があるなと思いつつも、心情的にトルコとギリシャの闘いをこの祭りの裏話として持たせたいのかなとも想像させられます。

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ロケット花火祭りの記念品

記念品になるかどうか、ヒオス島の子どもたちにとってこのロケット花火祭りに参加することは憧れ。大きくなったら射撃主になるんだとワクワクしながら、この夜を過ごします。

そして翌朝、街中に落ちたロケット花火の残骸は彼らによって集められ、しばらくはその数や大きさを自慢しあう光景が見られます。

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用意するもの

現地のロケット花火飛ばしたちは、タオルを口元に巻く程度の軽装でこの戦いに挑んでいます。

でも、この日に町を歩くならヘルメットか盾か、少なくとも防災ズキンくらいは必要かもしれません。

火の粉が至るところで舞いとび、流れ弾ならぬ流れ花火に襲われる危険もあります。不思議と大きな火事は起きていないようですが、それはあくまで住民たちが十分に注意を払っているから。攻撃のとばっちりを受けそうな家はみな流れロケット花火に備えて金網を張り巡らせているほか、バケツいっぱいの水があちこちに用意されています。

ただし、観光でフラフラと歩き回る自分の身は、自分で守りましょう。

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参加できること

参加は可能ですが、参加できるチームが決まっているので、そのチームに入れてもらうことが条件となります。

祭りの間は本来、ロケット花火を打ってもいい場所とグループとが決まっています。また、本来は相手の教会の鐘楼の鐘を目指して打つべきロケット花火なので、固定の発射場も決められています。

小高い位置や広い草原などに作られた発射場は、ななめにロケット花火を立てかけられるように工夫されていて、さらに点火する場所に敵のロケット花火が飛び込まないように鉄ネットもかけられていたりします。

参加者たちはそれぞれに場所取りした発射場で、昼間からロケット花火の仕込みをしながら、設置されたスピーカーや拡声器で、自分たちの今年のロケット花火の威力自慢を伝えあって気分を盛り上げていきます。

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一番の見どころ

飛び交う炎はできれば頭上にあってほしくありません。本気で参加するのでなければ、室内からの鑑賞が安全でおすすめです。

でも、両陣地がロケット発射のために建設する櫓部分に登る勇気があるならば、高いところから飛び交う花火を見たり、火の粉が舞う中でロケット花火を補充し点火するという危険度マックスな場面を真横にするという、度胸試しのような見どころにも立ち会えます。

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ロケット花火の前に観光も

ヒオス島は観光地としても知られています。トルコに近いことからその文化的な影響も大きく、街にはクシスタという白い壁に黒の幾何学模様を刻んだ少しアジアンテイストの美しい建物が立ち並んでいます。

また、エーゲ海一帯に残される遺跡からの遺物を展示する博物館も多く、文化的な観光資源には事欠きません。

そして海。島の周囲には砂浜と岩場のどちらもあり、クルージングで景観を楽しみ、ボートでしか行けないプライベートビーチでのんびりと甲羅干しするのも最高の楽しみです。

せっかく訪れたなら、ロケット花火祭りの激しさとは違った、優雅でゴージャスな面も味わっておきたいものです。

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まとめとして

参加者だけでなく、周辺住民たちも巻き込む危険な祭りは、教会同士の利権が絡んできた過去があり、どちらも退けない状況に陥っているという話もあります。

信者たちが火遊びに夢中になってケガをするイースターは、どんな角度から見ても正しい祝い方とはいえそうにありませんが、珍しさやおもしろさではピカイチです。

ただ、この祭りは年々激化の傾向にあり、この村では1年を通してこの一晩のためのロケット花火を作り続け、この一晩のために家を守る鉄板や鉄網を用意しているとのこと。祭りだからの一言では済ませられない苦労がありそうです。

火事になってもケガをしても、一切補償は受けられないという、このある意味世界でもっとも危険な祭り。見に行きたいような、参加してみたいような、でもやっぱり怖いような…


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